誰かに愛されているはずなのに、なぜか心の奥でずっと不安が消えない。
あるいは、愛されているかどうかが気になって落ち着かず、「もしかして愛されていないんじゃないか」と疑ってしまう。
人間関係や恋愛において、他者からの評価に自分のメンタルが激しく左右されてしまうことってありますよね。
僕が普段からよくお伝えしていることのひとつに、
「メンタルが落ちる主な要因は結果と他者評価である」
という話があります。
もう少し厳密に言うと、結果や他者評価そのものが悪いわけではなく、
それらが「自分の価値基準(価値ごと)」になってしまっている状態。
その状態がメンタルを悪化させます。
自分の存在価値が相手の評価と結びついてしまうと、相手の反応が自分の望むものではなくなった瞬間に、メンタルの状態は著しく下がってしまう。
では、他者評価に左右されない自分を作るにはどうすればいいのか。
ここには大きく分けて二つのアプローチがあります。
ひとつ目は、多くの人が無意識にとる「自己効力感アプローチ」です。
愛されたい、認められたい、高く評価されたいという思いから、それを得るためにひたすら頑張るという方向性です。
「得られないから不安なんだ。だから手に入れば不安は消えるはずだ」
と考え、相手の機嫌を取ったり、あるいは相手が本当に自分を思ってくれているか試すような行動をとってしまう。
しかし、この方法には大きな落とし穴があります。
仮に愛情や承認を得られたとしても、「これをいつか失ってしまうのではないか」「見捨てられるのではないか」という恐れが常につきまとうことになる。
愛されているはずなのに不安が消えないのは、まさにこの「失う不安」を抱え続けているからにほかなりません。
一方で、僕がおすすめしているのが「自己肯定感アプローチ」です。
これは、愛されるかどうか、評価されるかどうかに関わらず、自分は幸せでいられるという状態を作っていくアプローチです。
「愛されなくても大丈夫」「評価されなくてもいい」と思える土台ができると、不安そのものが根本から解消されていきます。
この自己肯定感を育てる上で、非常に参考になるのが海外の「主観的幸福度研究」です。
この研究では、幸福度が高い人にはある共通点があることが分かっています。
それは、「幸福の源泉が分散されている」ということです。
幸福度が高い人は、家族や友人、仕事、目標の達成、身体の健康、趣味や余暇、経済基盤、生活環境、パートナーシップなど、人生のさまざまな領域に喜びの拠点を散りばめています。
多様な分野でポジティブな感覚を得る機会を持ち、感情の種類そのものが豊かな人ほど、幸福度が高い。
さらに興味深いのは、全体的な幸福感というのは、たったひとつの突出した領域だけでは維持できないという点です。
たとえば、仕事ですごくポジティブな感情を得ていたとしても、他の分野で心が満たされていなければ、トータルの幸福度は大きく下がってしまいます。
これは恋愛でもまったく同じです。
恋愛の中だけでしか喜びを感じられない状態になると、そこがあまりにも重要になりすぎてしまい、相手のちょっとした言動に過敏になります。
失う不安が強くなるあまり、コミュニケーションがぎこちなくなったり重くなったりして、結果として関係性を自ら壊してしまうことも少なくありません。
僕自身も日頃から「幸福のポートフォリオ」を意識して分散させています。
家族との関係の中で感じる温かい愛情や繋がり、発信活動で頭を使って何かを生み出したり貢献したりする達成感、
イケジムや個人セッションでクライアントさんと向き合い変化を共有する喜び、
気心の知れた仲間とキャンプに行って焚き火を囲んだりボードゲームに熱中したりする純粋な楽しさ、
読書や映画で知的好奇心が満たされる感覚、筋トレで昨日より重いものを挙げたときの自己成長、そして心地よいカフェや自宅で過ごす時間の平穏さ。
こうして解像度を上げてみると、私たちが「ポジティブ感情」とひとくくりに呼んでいるものの中には、実に多様な種類があることが分かります。
心理学ではこれを「エモダイバーシティ(感情の多様性)」と呼んだりしますが、
達成したときの誇りや有能感、人と通じ合えたときのオキシトシン的な安心感、友達とくだらないことで大笑いする楽しさ、
一人で静かに過ごす安らぎ、サウナから上がったときの深い開放感、
旅先での非日常感など、心を満たすルートは本来無数にあるはずなのです。
ところがメンタルが不安定になりやすいときというのは、たったひとつのポジティブ感情だけで自分を満たそうとしてしまっています。
恋愛におけるドキドキ感や「愛されている」という実感だけで心を満たそうとすると、当然ながら相手次第で感情が揺れ動くため、心は常に不安定になります。
しかも、ひとつの対象に依存すると「視野狭窄」が起こり、新しい挑戦や人間関係に興味が持てなくなっていきます。
視野が狭くなるから他の楽しみを見つけられず、ますますひとつのことにすがりつき、不安が強くなっていくという悪循環に陥ってしまうのです。
逆に、感情の供給源をいくつも持っていれば、たとえ恋愛で少し摩擦やすれ違いが起きたとしても、別のルートから心が満たされるため、脳の扁桃体がパニックを起こさずに済みます。
「もしこれが思い通りにいかなくても、私の人生には他にも楽しいことがたくさんあるから大丈夫」
と心から思えるようになる。
そうやって心に余裕ができると、相手をコントロールしようとせず自由にさせてあげられますし、自分自身が自然とご機嫌でいられるようになります。
機嫌がよくて余裕のある人は魅力的に映りますから、皮肉なことに、分散させたほうが結果として本命の恋愛や仕事もうまくいくようになるのです。
これは食事の栄養バランスとよく似ています。
タンパク質が体に良いからといって、タンパク質だけを食べ続けていては健康になれません。
ビタミンも脂質も炭水化物もバランスよく摂るからこそ、体は健やかになります。
心もそれとまったく同じで、いろいろな種類のポジティブ感情をバランスよく摂取し、脳の神経回路を整えていくことが、本当の意味でのメンタルの健康とレジリエンス(回復力)に繋がっていきます。
最初は「他のことなんて興味が持てない」「こんなことをして意味があるのかな」と感じることもあるかもしれません。
ですが、幸福の源泉をひとつに絞らず、日常のあちこちに小さな喜びの種を散らしていくこと。
その分散の意識こそが、他者評価に振り回されず、しなやかで強い心を作っていくための確かな一歩になります。
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