LINEの文章を解読することに情熱を注ぐ男

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<この物語はフィクションです>

 

いつからか、バーで人生相談を受けるようになった。

今日訪れた相談者は俺に、「このLINEのやり取りをどう思うか」と尋ねてきた。

男にとって、LINEのやり取りはそれほど重要なことらしい。

相手は、女。

つまりは、文章から女の気持ちを推し量ってくれ、ということだった。

女の文章は、必要以上に装飾されていた。

文末には常に星がキラキラと光り、見た目にはすごく明るい文章だ。

だが、無理に明るくしようとしているその姿勢にこそ、女の本質が見える気がした。

必要以上に明るく在ろうするのは、自分の暗さをごまかすためだろう。

男は文章の内容はどうかと尋ねてきたが、文章の内容云々以前にそちらの方が気になった。

内容を見てみれば、なんてことはない。

可もなく不可もなく。今のところ、友達としか思われていない。

必死になって文章を練り俺に相談するような男なのだから、それも当然だ。

文章の内容と向き合うよりも、文章の内容と向き合っている自分と向き合うべきだった。

男はやたらと心配性で、相手の文章を見てはあれやこれやと質問をし、答えを欲しがる。

「相手がどう思っているかなど、本当のところは分からん」

「そうなんでしょうけれど、一緒に考えてはもらえませんか?」

「勘弁してくれ」

「そこをなんとか」

「やめとけ。泥沼にハマるだけだ。そんなことをしている暇があったら、さっさと食事に誘え」

「そんな!タイミングというものがあるんです。流れとか、相手のテンションとか…」

「一度でいいから、そういうものを全部無視してみたらどうだ」

「無視なんてできるがわけがない!」

「まあ、そうだろうな。それに、今のお前が俺の言う通りにしたところで、変な奴扱いをされるだけだろう。お前にはまだそれが自然に見えるだけの雰囲気やオーラがない。お前が本当に向き合うべきなのは、そこさ」

「よくわかりません」

「それはそうだ。分かっているなら、お前はすでにその女と食事をしている」

「私にも、見せてください」

マスターが横から出てきた。

男からスマートフォンを受け取り、画面を見つめる。

「面白いじゃないですか。一緒に文章を考えましょう」

「おいおい、本気か?あんたがそんなことを言うとはな」

「私にも、そういう時期がありましたから。

確かにあなたの言う通り、不毛なことなのかもしれない。

でも、私たちが今不毛だと思うことでも、本人が心からそう思うまでやりきらせてみることも、悪くはないと思うのです。

私たちが持つ答えだけが答えであるとは限りませんしね」

「…なるほどな」

相談に来た男は、何を話しているのか分からない、という顔をしている。

マスターは気にせず、LINE文章の解読を始めた。

「さて、この文章はどういう気持ちで打ったんでしょうねえ…」

仕方ない。

マスターからスマホを受け取り、文章を読む。

「これは、あれだろうな…」

 

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