<この物語はフィクションです>
「今日は、いますか。相談に乗ってくれる人」
「俺がそうだ」
「え、前はいないって言っていたじゃないですか。あなただったんですか」
「相談に乗りたくない日だってある」
「ひどいですね」
「勘違いするな。俺に相談に乗らなきゃならない義理などない。『ひどい』などと言っている時点で、お前はズレている。
本来期待などすべきでないことを期待し、勝手に裏切られたと傷つくのは愚かな人間のすることだ。勝手に期待したなら、応えてもらえないことも覚悟しているべきだろう」
「それは確かに、そうかもしれません」
「ビールをおごれ。それが嫌なら、帰るか、端っこで静かにしているんだな」
「マスター、ビールを。僕にも」
「何があった?」
「やりたいことが、ないんですよね」
「別になくてもいいだろう。なくてもいいと思ったときにやりたくなったことをやればいい」
「どういうことですか?」
「やりたいことがあるべきだ、と考えているときは、誰かの目を気にしているもんだ。
やりたいことがない自分はダメだ、などと思ったりな」
「やりたいことは、なくてもいいのでしょうか?」
「当たり前だ。
なくてもいいと思えたとき、そこにある。
そういうものだ。
なくてもいいと思ったとき、自然に、頭で考えることをやめて、自分の心や感情に目を向けることになっている」
「なくてもいい、か」
「あらゆることに言えることなんだと思うがな」
「おじさんは何をやっている人なんですか」
「俺か。女のヒモさ」
「ヒモ」
「小説を書いているんですよ、この方は」
「マスター、言わんでいい」
「すいません」
「なぜ嘘を?」
「人にバカにされてるくらいが、ちょうどいいんだよ」
「俺は、バカにされたくないです」
「そう思っているからバカにされるのだと、知るときが来るさ」
お知らせ。
今日の19時から、
6月7日(日)大阪
6月14日(日)東京
で開催する出版記念トークライブの申し込みを受付開始します。
前回の東京開催では募集開始から数時間で満席になってしまったので、ご注意ください。
19時になったら、ブログ、メルマガで申し込みページを公開します。
メルマガも好評なので、良ければ。