子供の不安が長引く『回避支援』とは?子供を救う親の対応法【最新研究】

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「うちの子、不安が強くて……」
「朝になると“行きたくない”と言って泣くんです」
「どう関わっていいかわからなくて……」

親として、子どもの不安を見ているのは本当に苦しいことです。

少しでも安心してほしくて、私たちは“助けよう”とします。

めっちゃわかります。

 

でも──

最新の心理学研究では、その「助ける」という行動が、実は子どもの不安を強めてしまうことがあるとわかってきています。

今日は、そのメカニズムと、どうすれば子どもの「安心」と「自信」の両方を育てられるのかについて解説します。

不安な子供への科学的に有効な親の対応法とは


 

不安を感じている子どもを見ると、ついこう言いたくなります。

「怖いなら無理しなくていいよ」
「今日はお休みしようか」
「代わりにママがやってあげるね」

それは間違いなく優しさから出る言葉です。

親として当然の行動でもあります。

 

ただ、心理学的に見ると、こうした対応は「回避支援(family accommodation)」と呼ばれています。

 

つまり、子どもの不安を避けるのを“手伝ってしまう”行動

 

短期的には安心することができます。

でも、長期的には「不安を避ければ落ち着く」と学習してしまう。

 

【回避することで不安を落ち着ける】と学習した状態。

 

そうした学習があまりにも何度も行われると、

「不安に直面しても大丈夫」という感覚が育たなくなっていくのです。

 

イェール大学の最新研究が示した『親を支援する』効果


 

この発見のきっかけになったのが、

イェール大学の臨床心理学者 Eli Lebowitz らによる研究です。

 

彼らが開発したのが、

SPACE(Supportive Parenting for Anxious Childhood Emotions

直訳すると「不安な子どもの感情を支える親の行動プログラム」

 

驚くべき点は、

このプログラムでは子どもに直接セラピーを行わないということです。

 

研究の概要

  • 対象:不安症を持つ7〜14歳の子どもとその親
  • 比較:
    ① 子どもが認知行動療法(CBT)を受けるグループ
    ② 親だけがSPACEを受けるグループ(子どもには一切介入しない)
  • 期間:12週間

 

結果は驚くべきものでした。

 

親だけをサポートしたSPACEの効果は、子どもに直接CBT(認知行動療法)を行ったのと同等。

つまり、親が変わることで、子どもの不安も改善したのです。

(Lebowitz et al., 2019, Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry

 

回避支援のメカニズム:優しさの裏にある『学習』


 

この研究の背景には、行動療法の基本的な考え方があります。

 

人は「不安を感じる→避ける→落ち着く」となると、

「避ける」ことを報酬として学習してしまいます。

 

つまり、

不安を避ければラクになる=避ける行動が強化される。

 

これが回避強化ループ

 

そして、親が「避けるのを手伝う」ことで、

そのループを親子で一緒に回してしまうのです。

親自身の不安


 

実は「回避支援」は、親自身の不安回避でもあります。

  • 「無理に登校させたらパニックになるのでは…」
  • 「泣かれたら自分もつらい」

この“自分の不安を避けたい”心理が働くため、親も無意識に回避支援を繰り返してしまいます。

→ 結果的に「親子での回避ループ」が形成されます。

研究的裏付け


 

関連する研究を紹介し、要点をまとめます。

Lebowitz et al., 2013 (J Child Psychol Psychiatry)

  • 不安障害の子どもを持つ親の95%以上が、何らかの回避支援行動をしていた。
  • 回避支援の程度と、子どもの不安症状の重さが強く相関
    (親が多く支援するほど、不安が強い)

Shimshoni et al., 2019 (Child Psychiatry Hum Dev)

  • SPACE介入後、親の回避支援行動が減少。
  • 親が支援を減らすほど、子どもの回避行動・不安が低下。

親が自分を責める必要は全くありません


もしこの記事を読んで、

「自分もまさにそうしてきたかも……」

「だから子どもの不安が強かったのかな……」

と感じた方がいたら、どうか自分を責めないでください。

 

回避支援は、愛情の証拠です。

 

「助けたい」「苦しませたくない」という想いがあるからこそ、そうしてきたのです。

それは“間違い”ではなく、むしろ“人として自然な反応”です。

問題は「やり方を教えられる機会がないこと」であり、あなたがダメだということは一切ありません。

 

また、研究によれば、

  • 親が「自分の育て方のせい」と自責すると、解決思考が止まり、子どもとの関係が“修正”ではなく“償い”の方向へ行きがち
  • その結果、必要以上の介入やコントロールが起きる。

こともわかっています。

その意味でも、「親が自分を責めない」ことは非常に大切であり、子供を支援することにつながります。

 

よくある「回避支援」の例


 

  • 「怖いから登校したくない」→「じゃあ今日は休もうか」
  • 「一人で寝るのが怖い」→「じゃあママも一緒に寝るね」
  • 「電話が苦手」→「代わりに電話してあげる」
  • 「不安になる話題は避けよう」→「なるべく触れないようにする」

一見すると、どれも優しさに見えます。

 

でも、これらの対応が「避ければ安心できる」という信念を強化してしまうのです。

 

不安を減らすより、“信じる”ことで育つ安心

 

SPACEが教えてくれるのは、「支援」という言葉の再定義です。

 

Support = Empathy + Confidence(共感+信頼)

この2つのバランスが、不安を乗り越える力を育てます。

 

① Empathy(共感)

「怖いよね」「不安になるよね」と感情を受け止める。
否定せず、理解を伝えることが大切です。

② Confidence(信頼)

「でも、あなたならきっと大丈夫」
「少しずつやってみようか」

と、子どもの力を信じるメッセージを添える。

 

この「共感+信頼」の組み合わせが、子どもの自己効力感を育てます。

 

実際のセッションで場で経験したこと


 

僕自身、セッションの現場でよく見るのは、

「子どものために頑張っている。だけど、方法がわからず途方に暮れてしまう」という姿です。

 

子供のために頑張ることは素晴らしいことで、大事なのは【頑張る方向性】です。

 

頑張る方向が『守る』ことに偏りすぎてしまうと、その優しさと愛が、

「あなたは一人では乗り越えられない」という無意識のメッセージになることがあります。

 

逆に、親が「信じる側」に立つと、

子どもが少しずつ挑戦し、

その成功体験が自信につながっていく。

最初の一歩は怖くても、

「やってみたら大丈夫だった」という経験が、不安を自然に薄めていきます。

 

実際に僕はメンタルトレーニングで【親の支援】も担当していて、

この記事でお伝えしていることを実践いただくことで不登校が改善し、学校からある分野で表彰されるまでになった子もいます。

今回お伝えしている内容は理論だけではなく、現場で実践し効果を実証済みの方法です。

「回避を支援していい」場合もある


 

ここまで読んで「じゃあ、怖がっている子どもを一切助けてはいけないの?」と感じた方もいるかもしれません。

もちろん、そんなことはありません。

極端なストレス状態やトラウマ的状況では、むしろ一時的な回避支援が必要です。

 

たとえば、

  • 強いパニックが起きているとき
  • 学校や人間関係の中で、明らかに心理的・身体的安全が脅かされているとき
  • 失敗体験が重なり、すでに“学習性無力感”の状態になっているとき

 

こうした場面では、まず「安心の回復」が最優先になります。

安全が確保され、心が少し落ち着いてからでなければ、

「挑戦」や「向き合う力」は働きません。

 

大切なのは、

「ずっと守り続ける」のではなく、

「一時的に守って、また信じて送り出す」こと。

 

支援には「守る支援」と「信じる支援」があり、

そのバランスは子どもの状態によって変えてOKです。

 

信じるという支援


 

親の心が落ち着いていると、

子どもも安心します。

「この子なら大丈夫」

そう信じるまなざしが、子どもにとって最大の支えになります。

イェール大学の研究は、それを科学的に証明したとも言えます。

子どもを“守る”より、
子どもを“信じる”ほうが、強く、優しい。

親の変化が、子どもの未来を変えます。

 

参考文献

  • Lebowitz, E. R., Marin, C., Martino, A., Shimshoni, Y., & Silverman, W. K. (2019).
    Parent-Based Treatment as Efficacious as Cognitive–Behavioral Therapy for Childhood Anxiety Disorders: A Randomized Noninferiority Study.
    Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry, 58(3), 274–282.
  • Lebowitz, E. R. (2020). Breaking Free of Child Anxiety and OCD: A Scientifically Proven Program for Parents.Oxford University Press.

 

今日からできる3つのアクションプラン


 

① 「共感+信頼」で声をかける

子どもが不安を口にしたとき、まずは「そう感じるのも自然だよ」と受け止めてあげましょう。

そのうえで、「でも、あなたならできると思うよ」と信頼の一言を添える。

例:「怖いよね。でも少しずつ慣れていこうね」
「緊張するよね。でも、あなたならきっと大丈夫」

“共感だけ”でも、“励ましだけ”でもなく、共感+信頼のバランスが鍵です。

 

② 「支援の減らし方」を小さく始める

いきなりすべての支援をやめる必要はありません。

1日にひとつ、「これは子どもに任せてみよう」と思えることを選びましょう。

たとえば:

・代わりに電話をしていたら、今日は一緒に横で見守るだけにしてみる。
・登校時に付き添っていたら、今日は校門の少し手前まで。

“親が手を離す”というより、“少し後ろに下がって見守る”イメージで。

ほんの一歩の変化で、子どもの自己効力感が育ちはじめます。

 

③ 自分自身の安心をつくる時間をとる

子どもの不安に向き合うには、親の心の安定が欠かせません。

一日10分でもいいので、自分のための時間をとりましょう。

深呼吸をする/少し散歩する/好きな飲み物をゆっくり飲む/信頼できる人と話す

自分が安心しているとき、子どもも自然と安心できます。

“子どもの支援”は、“自分のケア”から始まります。

 

 

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