今日は、「世界で最も先延ばした男に学ぶ先延ばし克服法」というテーマで書いていきます。
やるべきだと思っているけれどなかなか手をつけられない、締め切りがないと動けない、あるいは締め切りがあっても動けない。
そんな状態になることがあるのではないでしょうか。
今回は、どうすればその状態を改善していけるのかを、最新の科学研究と歴史的な事例の両面から紐解いていきます。
具体的には、どういうメンタル状態になると先延ばしが起こるのか、逆に先延ばしをまったくしなかった男の存在、
そして、めちゃくちゃ先延ばしした人と全然しなかった人の違いは何なのか。
歴史と最新科学の視点から、具体的な克服法を見ていきましょう。
今日登場してもらう人物は、レオナルド・ダ・ヴィンチです。
一度は耳にしたことがある名前だと思います。彼は非常に頭脳明晰で、美術的な能力はもちろん、科学にも深く精通し、発明もこなすなど、一般的に天才と称される人物です。
しかし、彼には知られざる特徴がありました。実は、ものすごい先延ばし癖があったのです。
例えば有名なエピソードとして、「7ヶ月でこれを作ってくれ」と依頼されたものに対し、
実際に完成したのが25年後だったという話があります。
また、彼の最も有名な作品である『モナ・リザ』も、実は未完成だと言われています。
要するに、結局生涯で完成させることができなかったのです。
修正を重ねながら、家の中にずっとこの作品を置いていたというエピソードが残っています。
結局、ダ・ヴィンチが生涯で完成まで持っていけた作品は、わずか15点ほどだとされています。
逆に、今回対照的な人物として取り上げたいのがピカソです。
ピカソは生涯で1万3000点もの作品を完成させました。これはどちらが良い悪いという話ではありません。
今回はメンタルの話をしていきたいので、ダ・ヴィンチとピカソのどちらが優れているかという議論ではなく、
ダ・ヴィンチが15点しか完成させられずに未完成のまま生涯を終えた一方で、ピカソはなぜ1万3000点も完成させられたのか、その違いはどこにあったのかを考えていきます。
(一方で、ダ・ヴィンチの作品がめちゃくちゃ素晴らしいものとして世界的に評価されているのも紛れもない事実です。
そのような傑作を作ることができたメンタル的な要因も存在します。
そこで、最後にダ・ヴィンチの優れた面に着目し、そこから僕らが学べることは何かという点についてもお話しします)
ではまず、なぜダ・ヴィンチはそれほどまでに先延ばしをしてしまったのか。
そのメンタル的な要因を紐解いていくと、原因の1つに「異常なまでの完璧主義」がありました。
これは最新の研究でも指摘されていることで、完璧主義は先延ばし癖の非常に大きな要因になります。
ダ・ヴィンチのケースで言うと、『モナ・リザ』の顔を描くときに、解剖学の勉強から始めてしまうのです。
顔の構造はどうなっているのか、微笑んでいるときの人体の構造はどうなっているのか、という部分をしっかり理解し、紐解いてから描こうとするため、準備段階のプロセスが膨大になってしまいます。
さらに、光の当たり具合で影がどう変化するのかを知りたくなり、光の学問である光学や物理学を学び始めます。
「これらを修めなければ完璧な絵は描けない」と考えてしまうため、描き始める前段階の準備だけで25年ほどかかってしまう、という事態に陥っていったわけです。
さらにメンタリティーとしても、完成させることより理想を追求することを重視していました。
解剖学にしても光学や物理学にしても、それ自体への興味が強すぎるあまり、どんどん学びたい気持ちが溢れて横道にそれまくっていったのです。もちろんそれが悪いという話ではありません。
「完璧になってからやろう」という意識が強すぎたために、完成させることが難しくなってしまったという背景があるということです。
これを僕らの現実に置き換えて考えてみましょう。
絵の例が非常に分かりやすいと思います。
例えば、完璧ではない絵を描くとします。すると、目の前に「完璧ではない下手な絵」が現れます。
完璧主義の感覚からすると、これが耐えがたいわけです。「自分が描くものはすべて完璧であってほしい」と思うがあまり、うまく描けていない絵を描くこと自体に強い心理的抵抗が生まれてしまいます。
ダ・ヴィンチの場合は特殊で、好奇心が強いと同時に、1つの絵に対して25年間向き合い続けるという、凄まじく強い持続力がありました。
これがダ・ヴィンチの大きな特徴の1つです。
しかし一般論として、そこまでの持続力を持って完璧を追求できるかというと、なかなかできません。
結局、「完璧にしたい」と思いつつも、実際には完璧に向けた行動を取ることができず、「描けない(動けない)」という状況に陥ることがほとんどなのです。
先延ばしの対象に対して完璧にしなければと思う。
でも、最初から完璧にはできない。だから描きたくないと思って行動を止めてしまう。
結局、この「描かない」というプロセスでストップしてしまうのが、完璧主義によって先延ばしが起こるリアルなメカニズムです。
だからこそ、ピカソ的なマインド、つまり「1回1回が完璧でなくてもいい、そこから学んで成長していけばいい」という、小さな前進を評価するマインドが重要になります。
そもそも、小さな前進自体を目的にしてしまってもいいわけです。
1個1個何かを描いたり、作品を作ったり、仕上げたりするのは、そこから学ぶためであると捉えます。
「今の自分はこういう状態で、このスキルが足りない」という気づきから学び、向上していくために完成させるのだ、くらいの感覚でいたほうが、作ること自体を楽しむことができます。
これは、ピカソが1万3000点も描けた背景を考えても頷けるはずです。
そこから学ぶこともできるため、着実に成長し、完璧や完成へと近づいていくことができます。
その際、繰り返しになりますが、「一時的、短期的な失敗を恐れない」という姿勢が非常に重要になります。
これは絵に限らず、あらゆる仕事においても言えることです。やはり失敗への恐怖と完璧主義は、強く結びつきやすいものです。
そもそも、なぜ完璧にしたいと思ったのか。
実は、ダ・ヴィンチの考えている完璧主義と、一般的に生じる完璧主義とでは、その出どころが異なることがよくあります。
ダ・ヴィンチの場合は、純粋な興味関心という「内発的動機」がベースにありました。
絵を描くことに強い興味があり、そこを極めるために解剖学をやる。誰かに命令されたわけではなく、自分が純粋に追求したいという気持ちで取り組んでいるのが彼の完璧主義です。
しかし、一般的な完璧主義のほとんどは、そのような内発的動機からくるものではありません。
「失敗したくない」「評価されないのが不安」という恐怖や不安が先にあり、それらを回避するための手段として完璧主義になっているケースが多いのです。
これはダ・ヴィンチの完璧主義とは全く質が異なります。
この場合の完璧主義は、不安や緊張といった感情を強めてしまうため、非常にストレスフルです。
そのため、できればその行動(例えば絵を描くこと)をしたくない、という心理になります。
それでも、恐れている事態を防ぐためには完璧にやらなければならないという強迫観念に駆られるため、非常に苦しい状態で取り組むことになります。
だからこそ、完璧主義に対する解像度を高く持つことが重要なのです。
ダ・ヴィンチの話を聞いて、「完璧主義だったからこそ素晴らしい作品が描けたのではないか」と表面だけで捉えてしまいがちですが、
本当にダ・ヴィンチが持っていた完璧主義と、一般的に陥りがちな完璧主義とでは中身が異なります。
ここが極めて大事なポイントであり、結局のところ、一時的、短期的な失敗を恐れない姿勢が大切になってきます。
失敗やうまくいかないことを「学び」に変えていく。
これができるようになると完璧主義から脱却しやすくなり、結果として先延ばしを防ぐことができるようになっていきます。
結局、先延ばしというのは、その行動に対して何らかのネガティブ感情を抱いているからこそ起こるものです。
完璧主義のケースで言えば、自らハードルを上げてしまうことで「難しい」と感じ、その難しさが自己効力感を低下させます。
その結果、「自分にはできないかもしれない」「どうせうまくいかないのではないか」という感覚に陥り、先延ばしを誘発してしまうのです。
こうした感情的な問題、つまりネガティブ感情こそが、先延ばしを引き起こす最大の要因になっているのが実情です。
最新の研究において、先延ばしの原因は「感情調整の失敗」であるとされています。
特に4つの感情がメインに関わっています。
その行動を取る際に、何らかの「不安」「退屈」「無力感」「苦手意識」を感じている状態です。
これらの感情を取るべき行動に対して抱くため、人はその行動を拒むようになります。
それならば、手軽にポジティブな感情を得られるスマホを見ているほうが心地よいため、ネガティブを感じる「取り組むべきこと」よりも、
ポジティブを感じる「スマホ」に惹かれ、結果としてやるべきことがあるのにスマホに時間を使ってしまう、という現象が起こります。
だからこそ、先延ばしを根本から防ぐためには、その行動に対して感じている感情を整える必要があります。
その大きな要因が完璧主義であり、完璧主義の奥にあるのが、小さな失敗や不出来に対する恐れの気持ちです。
この恐れの感情を緩和させることができれば、行動に対して抱いているネガティブ感情を和らげることができるため、先延ばしが解消されるという理屈になります。
具体的なアプローチとしては、先ほどのピカソのような感覚を持ち、「1枚1枚、1個1個が完璧でなくていい」と割り切ることです。
そこから学んで成長していけばよく、もはやそれを目的にしてしまっても構いません。
自分の成長や小さな前進自体を目的にし、それを楽しむ感覚が持てれば、恐怖や不安は自然と薄れ、行動に移しやすくなります。
さらに、「極限までハードルを下げる」ことも非常に有効です。
心理的に「これくらいならできそうだ」と思えるレベルまで、最初の行動を小さくするのです。
「どうせできない、うまくいかない」という無力感や苦手意識が出ると先延ばしになりますが、ハードルを極限まで下げて「できそう」と感じられれば、自己効力感(エフィカシー)が高まります。
これは無力感や苦手意識とは真逆のポジティブな感覚です。
ハードルを下げることで感情の抵抗を乗り越え、小さな前進を積み重ねていく。そうしてスピーディーに行動を起こしていくことこそが、先延ばし克服法の核心です。
ここからは番外編として、本編とは少し角度を変え、ダ・ヴィンチが教えてくれている素晴らしい視点についてもお話ししていきます。
彼が示してくれているのは、「高い基準を持つことによって、幅広いモチベーションが生まれる」という仕組みです。
願望の円が大きければ大きいほど、人生において重なり合う円(やるべきこと)が増えていきます。
一番中心にあるのが「願望の円」です。ダ・ヴィンチの場合、美術に対する「より良い絵を描きたい」という願望が圧倒的に高かった。
その結果何が起こったかというと、「いい絵を描くためには解剖学が必要だ」「光学や物理学を学ぶ必要がある」という風に、周囲の領域へと関わりが広がっていったのです。
もし彼の基準が「そこそこ上手い絵が描ければいい」という低いものだったら、解剖学や物理学に対するモチベーションなど絶対に湧かなかったはずです。
つまり、何にモチベーションを感じるかという要素には、どれだけ高い基準や願望を持てているかが深く関係しています。
自分自身の人生に対する願望、例えば「ビジネスパーソンとして成功したい」という強い想いがあったとします。
その基準が高くなればなるほど、「最高のビジネスパーソンを目指すなら、フィジカルの管理が不可欠だ」「生産性を高く維持し、40代50代になっても良い状態で働き続けたい」という未来のイメージが明確になり、その瞬間に「運動する必要がある」という動機が生まれます。
理想のゴールという願望の円が広がれば広がるほど、そこに内包される領域が増えていくのです。
「40代50代になっても健康的でありたい」という未来のイメージができたとき、運動や勉強という円が自動的に広がり、最終的には食事管理の領域までカバーするようになります。
これを僕は「共有ゾーン」と呼んでいますが、それぞれの領域に対して自分の願望の円が広がり、それらの円が交わり合えば交わり合うほど、強力なモチベーションが湧き上がってきます。要するに、すべての物事が「自分ごと」になるのです。
例えば食事管理についても、「テレビやネットで言われているから、健康的な食事をすべきだろう」と感じる段階は誰にでもあると思います。
しかし、本気になって取り組めるかというと、なかなか難しいのが現実です。
なぜなら、自分の願望の円が明確でなかったり、十分に広がっていなかったりするために、食事の円と交わり合っていないからです。
これが「自分ごとになっていない」という状態です。
「何のために食事を整えるのか」という目的が、自分のビジョンや価値観と結びついていないため、「食事管理すべきだけど、まあいっか」という低い優先順位になってしまうわけです。
勉強についても同様のことが言えます。
「勉強すべきだ」「英語が話せたらカッコいいから学びたい」と思いつつも、本気になれず、習慣化する手前で止まってしまう。
こうしたケースでは、自分にとっての基準や未来のゴールイメージが曖昧であるか、あるいはその円が広がっていないために、勉強という円と交わり合っていない可能性が高いのです。
運動や食事、勉強に対して、「本当にこれが必要で、やるべきだ」と心の底から思えていないことが、先延ばしの原因になっていると考えられます。
ダ・ヴィンチの場合は、求める基準が圧倒的に高かった。
だからこそ、多くの分野を学ぶ必要性が生まれ、「あらゆる領域に好奇心を持って取り組む」というサイクルを回すことができたのです。これが、ダ・ヴィンチが教えてくれる大きな教訓です。
ただし同時に、彼の完璧主義を今の時代にそのまま適用してしまうと、非常に生きづらくなります。
ダ・ヴィンチが生きた時代は社会の変化が緩やかだったため、「25年かけて完成させる」というアプローチでも通用しました。
しかし現代は、変化のスピードが圧倒的に早いです。今「完成まで25年かかります」などと言っていては、完成する前に環境も状況もすべて移り変わってしまいます。
そこで僕たちに必要なのは、自分自身を「メタ認知」することです。
「今、自分は失敗を恐れて完璧主義(先延ばし)になっていないか」、逆に「高い基準やゴールを持てていないせいで、モチベーションが湧かずに先延ばしになっていないか」。
このように、今自分がどういう状態にあるのかを客観的に把握することが重要です。
その上で、今回お話しした4つのアプローチ(ハードルを極限まで下げる、小さな前進を目的にするなど)を打っていく。
自分の状態が解像度高く見えてくれば、打つべき対策も的確になり、行動が変わって現実が好転していきます。ぜひ、これらのポイントを意識して、日常生活で試してみてください。
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