<この物語はフィクションです>
レストランで昼食を取っていた。
あまりにも空腹だったので、腹を満たすためだけに選んだ店だった。
周りには、サラリーマン風の3人組と、なぜか小学生らしき少年が一人でいる。
少年は、ゲーム機を持ち、厳しい表情でゲームをしていた。
サラリーマン風の男たちは株の話やビジネスの話で盛り上がり、リーダー風の男の講釈をその他の二人が聞いているようだったが、声が大きすぎてうるさい。
そう思っていると、少年がゲーム機を置き、サラリーマン風の男たちに声をかけた。
「おっちゃんたち。ちょっと黙っててくれ。こっちは今、勝負どころなんだ」
「勝負どころ?」
「そう、ついに、ラスボス。ここまで、長く厳しい道のりだった」
3人のサラリーマンたちは、笑いながら答える。
「ハハハ、悪かったね、坊や。でもこっちは、株やビジネスの『大事な』話をしているんだ」
「こっちだって、『大事な』局面を迎えてる」
「ゲームの話だろう?こっちは、お金が関わる『本当に』大事な話なんだよ。お金さ。分かるかい?」
「おっちゃんたちが大事にしてることなんか知らないね。俺は今、お金持ちだから、お金の話に興味はないし、それが大事な話だとは思わない」
「ほう、金持ち?」
「そうさ、見るかい?俺のお気に入りの財布に5000円も入ってる。うちのママが、奮発したんだ。泣けてくる。せっかくだからありがたく、ステーキを食べせてもらってる」
「5000円?ハハハ!まあ、そうだねえ、君からすれば金持ちなのかもね。でも、私の財布には、10万円ほど入っているよ」
「ここをどこだと思ってる?レストランだぜ。10万円もいらないね。オムライス何杯食べるつもりだい?」
「なっ…」
「5000円あれば、ここにあるものは何でも食べられる。これが、金持ち以外の何だって言うのさ」
面白いことを言う少年だった。
「今は金の話より、あのウエイトレスのかわい子ちゃんをどうやってデートに誘うかの方が、興味あるね」
少年らしからぬことを考えている少年だった。
「おじさんたちじゃ、あのウエイトレスのかわい子ちゃんをデートに誘えそうにないね」
「なんだと!」
「だって、なんか、色々なものに負けちゃってるよね、自分が。多分、かわい子ちゃんにも負けちゃうんだろうな」
「何を言っている!」
「もういい。黙っててくれさえすれば。俺は、集中してゲームがしたいだけだから」
「子供だからって、いい気になりやがって」
3人組のサラリーマンが、険悪な雰囲気になってきていた。
「おっと、やる気かい?やめときな。俺に向かってきた2組のアキラは、鼻血出してベソかいてたぜ。つまり、ただじゃすまないってことさ」
「わけわかんねえこと言ってんじゃねえよ」
さすがに怪しい雰囲気になってきた。
「すいません、うちの子が何かしたでしょうか」
とっさに、父親のフリをすることにした。
「あ?あんた、この子の父親?」
「はい」
少年が、「誰だ?」という顔をしたが、目配せをすることでこちらの意図を理解したようだ。黙っている。
「何か気に触ることをしたなら、きちんと言い聞かせておきますので」
そう言うと、サラリーマンたちのリーダーが「帰るぞ」と言い、店を出て行った。
「ありがとう、お父さん」
「ふざけるな」
「感謝してるのは本当だよ。さすがの俺も、大人3人だとやられちまってたかもしれない」
「ボコボコだろう」
「ま、そうだろうね」
「お前みたいな喋り方をする小学生は初めて見るな」
「褒め言葉と受け取っておくよ」
「何年生だ?」
「3年。小学校に入って、もう2年以上経った。早いもんだぜ」
「おかしな奴だ」
「言われ慣れたね。でも、これが俺だから」
「それが悪いとは言っていない」
「おっちゃん、いい奴じゃん」
「俺はもう行く」
「また会えるかな」
「さあな」
「おっちゃんには借りがある。次会ったときは、コーラの一本でもおごらせてもらうよ。お望みなら、ファンタでもいい」
返事はせず、店を出る。
帰り際、レストランの窓から少年の姿が見えた。
少年は出されたステーキを味わいながら食っていた。
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