「…また来たのか」
「まだじっくりと話させてもらえてないのでね」
「お前が話したくても、俺が話したいとは限らん」
「そうは言いつつ、聞いてくれるんでしょう」
「ビールをおごれ」
「やっぱり優しいんだ」
「黙れ。さっさと話せ」
「職場なんですが、みんなに嫌われてまして。まあ振り返ってみれば、自分勝手だったのだと思います。ただ、それも反省して、自分では変わったと思っているのですが」
「それでも、周りは変わらないか」
「…」
「これは俺の勝手な推測で、俺が答えを知っているわけでもない。一つの意見だ。あくまで俺の考えで、俺だったらどうするか、ということでしかない。そう思って聞け」
「はい」
「お前は、周りを変えようとしているんじゃないか?」
「変えようとしている?」
「お前を許すように、だ。そして、お前を許さない相手のことを、お前は心の底で責めている」
「…」
「相手を変えようとしているお前の心の底の思いが、言動に出てるんじゃないか。
謝るという行為一つ取っても、お前は相手を変えるために、自分のために、謝っているんじゃないか」
「でも、やっぱり許して欲しいですし」
「違う。自分を許さない相手にOKを出せ」
「え?」
「お前はすでに反省し、行動を変えようと思っているのだろう。なら、それでいいじゃないか。
許されなくていい。
許されなくていいんだ。
許す許さないは、相手の問題だ。
お前はただ、相手のそのままにOKを出し、愛のある行動をするだけでいい」
「もしそれでも相手が変わらなかったら?」
「それでも相手にOKを出せ」
「難しいですね」
「だろうな。けどな、相手を変えようとしないお前の在り方が、相手を変えるんだ」
「…」
「最初に言ったが、これはあくまで俺の意見だ。
俺なら、素直に自分の非を認め、けれど卑屈にはならず、愛のある行動を取り続ける。
周囲が変わることを期待せずにな」
「…」
「あとは自分で考えろ」
「…」
「もうお前とこれ以上話す気はない。もがき続けることだ」
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