踏み出せないのか、踏み出さないのか。自分が本当に望んでいること、望んでいると思っていること

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<この物語はフィクションです>

 

「クリスマスだっていうのに、仕事するの?」

「まあな」

「変なの」

「クリスマスだけ人間が変わるなんてことはできないってことだ」

「いいじゃない、クリスマスくらい」

「俺だって、何度もそう自分に言ってきたさ。しかし、頑固でね。俺にも普通になれない悲しみみたいなものは、あった」

「つまんない」

「夜だけだったらいい」

「ディナーってこと?」

「そうだ。チキンでも食おう」

「何時?」

「そうだな、19時」

「わかった」

「また、連絡する」

書きかけの原稿があった。

今出かけたところでこの原稿のことが気になって上の空になってしまうことは目に見えている。

以前に、それで失敗してしまったことがある。イライラしてしまい、楽しめないのだ。

それ以来、心残りがあるときや、自分の状態が悪いときに無理に人に会うことは避けるようにしている。

俺はこういう風にしか生きられない、と受け入れるのには時間がかかった。

女は好きだが、女にのめり込むことはできない。

仕事の時間が侵されそうになると、距離を置きたくなってしまう。何をするにしても、仕事のことが頭に浮かぶのだった。

随分前に、心惹かれた女がいた。

向こうも、その気だったと思う。

しかし、一歩踏み出すことはなかった。一歩踏み出せば、関係を持つこともできただろう。

当時はよく、臆病者めと、自分を罵った。

だが、後で気づいた。本当は一歩踏み出したくなかったのだ。

一歩踏み出さないことを、自分が選択していた。

人生で手に入れることができなかったものは、たくさんある。

ああしておけば。こうしていたら。手に入れることができたかもしれない、と思う。

しかし、その当時は、そうしない、それを本気で手に入れない理由があったのだ。

その代わり、他の大切なものを手にしていた。

今手にしているものに気づかず、手に入れないことを自ら選択した「手に入れてないもの」のことで、思い煩う。

それが人間というものか、と気づいたとき、一人で笑った。

俺は、生きたいように生きてきたし、今も、生きたいように生きている。

クリスマスに、原稿を書く。

いいじゃないか。

寂しい?

それを寂しいと言う、その人間の心こそが、寂しいんじゃないか。

一人でいることが寂しさでもなければ、大勢でいることが温かさでもない。

強がり?

違うね。そう思ってしまうのも分かるが、強がりではなく心からそう言える、そんな日が来る。

今の言葉を、今書いているあいつに語らせよう。

あいつにピッタリのセリフじゃないか。

19時までには十分書き終えられるだろう。

今日は良い気分でディナーを迎えられそうだった。

 

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