<この物語はフィクションです>
そいつは、刺すような視線をしていた。見てくれはお世辞にもカッコ良いとは言えない。が、おそらく、自分では自分のことを悪くないと思っている。しかし、自分が思っているほど周りは自分を評価してくれない。その自意識がそいつ自身を苦しめているように見えた。
たまには、美人の相談者でも現れてくれないもんかな。そう思いながら、そいつの話を聞いていた。
「世の中って、不公平ですよね」
「何だ、急に」
「俺は何の才能もない平凡な人間です。でも、世の中には才能に溢れた人間もいる」
「ありふれた話だな」
「俺にとっちゃ、切実な問題です」
「人間の才能における不公平なんて、当たり前のことだろう。早く受け入れたらどうだ」
「不公平なんておかしいじゃないですか。公平であるべきでしょう」
「そんなことをグチグチ言っている間に、年取って死んじまうのがオチだな」
「どういうことですか」
「そんなこと言っている暇があったら、少しでも体を動かせってことさ」
「…」
「世の中のほとんどは平凡な人間だ。その中で、ほんの少しでも才能があると感じられることを見つけて、必死こいてそれにしがみついて、伸ばしていくもんなんだ。お前には、その必死さが感じられんな。なぜか分かるか?」
「さあ…」
「自分の平凡さを受け入れてないからだ。俺は平凡だ、と言いつつな。心の底では、もしかしたらなんて思ってる」
「…」
「世の中には2種類の平凡な人間がいる。
平凡を受け入れて非凡になる人間と、平凡を受け入れず平凡で終わる人間だ」
「…?」
「自分が平凡であると認めた奴は、そう認めたからこそ、人よりも行動するようになるものなんだよ。
平凡なくせに平凡なことを認めてない奴ほど、何もやらん」
「はあ…。そうなんですかね」
マスターがぴくりと反応する。
「まあ、これは俺の意見に過ぎんよ。どう受け取るかは、お前次第さ」
その後、取り留めのない会話を交わし、話すこともなくなってきた頃にそいつは店を出た。
「マスター、変われるかね。あいつは」
「難しいでしょう」
「なぜ?」
「人の言葉を、飲み込んでいないからです。聞いているようで、本当には聞いていない。
自分の話を聞いて欲しいだけでしょう。
本当の意味で変わりたいと思って、あなたのもとに来たのではない」
「確かにね」
「後は、彼次第です」
「……。そうだな」
「…?お疲れですか?」
「昨日、根を詰めすぎた。まあ俺も、平凡な男ってことだな」
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