<この物語はフィクションです>
17時。まだ、外は明るい。
バイトに新入りが入ったということで、いつもよりシフトが早い時間帯になり、終わる時間も早くなった。しかし、気軽に誘う友達が多くいるわけではない自分にとっては、早く上がったところで特にすることはなかった。
原付バイクを走らせ、TUTAYAに行く。映画が大好きだというわけではない。別に名作どうこうにも興味はない。誰もが見るような映画を、誰もが見るように楽しむだけ。
そんな自分が忌々しくなり、無理をして古い名作と言われる映画を借りたこともあるが、結局、観ないままに返却した。難しいことは分からない。分からない自分をどうにかしようと思ったこともあるが、結局そのモチベーションは続かなかった。
今回借りたのも、公開時に話題になっていた人気ランキング2位の映画だった。
レジを担当してくれた店員は可愛かった。前から気になっている。だけど、何もしない。いや、何もできない。心の中でどうにかならないかと思いながら、すでに半年が経っていた。
帰りに、自分が働くところとは違うコンビニでコーラとスナック菓子、そして弁当を買う。今日の晩飯。最近Facebookで健康に関する記事をよく見かけ、そこからコンビニ弁当を買うことに若干の罪悪感が生まれているが、まだ買わないという選択をさせるには至っていない。
家に帰り、弁当を食べた。そして、コーラを飲み、スナック菓子を食べながら映画を観る。
映画はそれなりに面白かったが、ただそれだけのことだった。
20時。特にすることがなくなる。
ふと、今日のことを思い出す。気になる男がいた。レジをしているときに綺麗な女と共にやって来た男。何の仕事をしているのだろうか。帰り際、女がバーがどうこうと言っていた。ここらへんでバーと言えば、数件しかなく、男が行きそうなバーと言えば一つしかない。
そこまで考えて、なぜここまでその男のことが気になっているのかと思う。しかし、自分でもよく分からなかった。
スマホが鳴った。
LINEでメッセージが来ていた。俺と同じように暇を持て余し、特にすることもない男からいつものように誘いのメッセージが来る。友人が少ない自分としては貴重な存在ではあるが、特にすることも話すこともなくなっていた。
それでも、自分一人でいると虚しさや寂しさを感じ、結局は何となく会って時間を潰すのだった。
しかし、いつもならすぐに返事をするところだが、今日は違った。なぜか、スマホを打つ手が止まる。特に、この後予定があるわけではない。いや、心の底で、実はすでに予定を立てているのか。
今日はやめておく、と打った。が、すぐに送信はできなかった。10分ほど考えた。考えて、そのままの文章を送信することにした。なぜと聞かれれば面倒だと思ったが、相手から来た返信は「了解!」だった。
服を着替える。大した服は持っていない。それでも、ある中で一番大人っぽい服を選んだ。着替えながら、一人で行くことに抵抗を感じている自分がいる。初めて行くのだ。しかし、自分もすでに26歳。一人でバーに行ったって、不自然ではないはずだと思い直す。
男がいるかどうかなど、分からない。
だが、今の毎日をほんの少しでもいいから、変えたい。男と話せば、何かが変わるのではないかという気がした。
26歳だが、何かを積み上げてきたのかと言われると、自信を持ってこれだと言えるものはなかった。それが自分のコンプレックスになっている。
だんだんと若いとは言えない年になってきていた。自分の人生、このままの形で終わるのか。そう思うと、心の奥底に虚しさが込み上げてくる。
このままでは終われない。
そんな思いが、自分をバーに向かわせていた。
続きはこちら。『人生を諦めかけた26歳フリーター、もう一度立ち上がる』
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